コラム

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2022.08.23

3.運動

身体活動による消費エネルギーを把握して効果的な減量に取り組む

Contents目次

監修・執筆

監修:医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆:管理栄養士 小林 真紀子(アムスランドマーククリニック健康増進科)

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大により在宅時間が増えたことで、身体活動が減り、体重が増加してしまったため、減量に取り組んでいる方も多いのではないでしょうか。

身体活動には、生活習慣病の予防やストレス解消など、様々な効果がありますが、肥満解消にも効果的です。

飲食物から得る「摂取エネルギー」とともに、身体活動による「消費エネルギー」を意識することは、減量に取り組む際に役立ちます。

そこで、今回は身体の活動強度を表す単位を用いて簡単に計算できる身体活動時の消費エネルギーについて紹介します。

身体の活動強度を表すメッツ(METs)とは

身体活動による消費エネルギーを把握するために、身体活動の強さの度合いを表すメッツ(METs)という単位が役立ちます。メッツは改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』にて確認できます。

メッツは座って安静にしている状態の活動強度を1とし、安静時の何倍の負荷が身体にかかっているかを示す値で、例えば、歩行に関する身体活動については、以下のような値が算出されています。

  • とてもゆっくりした歩行(時速3.2㎞未満)・・・2メッツ
  • 普通歩行(時速4.0㎞)・・・3メッツ
  • ゆっくり階段を上る・・・4メッツ
  • 速歩(時速6.4㎞)・・・5メッツ
  • ゆっくりとしたジョギング(時速6.4㎞)・・・6メッツ
  • ランニング(時速8.4㎞)・・・9メッツ

ランニングの活動強度は9メッツなので、安静時に比べて9倍の負荷がかかっている(=エネルギー消費している)ということです。

メッツ表には様々な活動について数値が算出されています。日常、何気なく行っている動作や運動が、どれ位の強度か確認してみるのも興味深いと思います。

エネルギー消費量は算出できるので効果的な身体活動が把握できる

座位安静時(1メッツ)の1時間あたりのエネルギー消費量は、1.0(kcal)×体重(kg)に相当します。つまり、エネルギー消費量は下記のように計算できます。

  • 安静時代謝を含んだエネルギー消費量(kcal)≒活動強度(メッツ)×時間(h)×体重(kg)

例えば、3メッツのウォーキング(時速4㎞)を10分行った場合、以下のように推定できます。

  • 体重50kgの方のエネルギー消費量・・・3(メッツ)×1/6(h)×50(kg)≒25kcal
  • 体重100kgの方のエネルギー消費量・・・3(メッツ)×1/6(h)×100(kg)≒50kcal

このように、同じ運動を同じ時間行なっても、体重によって消費エネルギーが変わります。

また、同じ時間、身体活動をしたとしても、「ゆっくり水泳を行う」(6メッツ)と、「ボウリングを行う」(3メッツ)では、エネルギー消費量は倍近く異なります。

エネルギー消費量は、活動強度と活動時間をかけ合わせたもの

下記は特定保健指導におけるアクティブガイドから抜粋したメッツ表とエネルギー消費量です。

エネルギー消費量は、活動強度と活動時間をかけ合わせたものなので、単に活動強度が高いものではなく、長い時間続けることができる活動を選ぶことで、より多くのエネルギーを消費できるようになります。

下記の表のエネルギー消費量は、活動強度(メッツ)×時間(h)×体重(kg)で計算した値から安静時のエネルギー量を引いたものです。

安静時代謝を除いたエネルギー消費量≒活動強度(メッツ-1)×時間(h)×体重(kg)

メッツごとの活動と体重別10分間のエネルギー消費量(kcal)

メッツごとの活動と体重別10分間のエネルギー消費量(kcal)

まとめ

減量が目的ならば3メッツ以上の活動を増やす

低強度(3メッツ未満)の身体活動でエネルギー消費量を増やすためには長時間の活動が必要となります。

そのため減量に取り組む場合は、なんとなく運動をするのではなく、「長い時間続けやすい3メッツ以上の中高強度活動を増やす」ことを目標とするとよいでしょう。

長い時間続けやすい中高強度活動

※エネルギー消費量は体重60kgの方が1時間活動した場合の安静時代謝を除いた値

  • 普通歩行(ウォーキング)・・・120kcal消費
  • 自転車に乗る(サイクリング)・・・180kcal消費
  • 水中歩行・・・210kcal消費
  • ランニング(時速8.4km)・・・480kcal消費

低強度の身体活動も生活習慣病予防に必要

中高強度活動だけが必要というわけではありません。低強度の身体活動についても、生活習慣病予防において一定の役割を果たしていることが分ってきているようです。

座りっぱなしの時間が長い方ほど、死亡や疾病発症のリスクが高いことが多く報告されています。1時間に数分程度は歩いたり、ストレッチをするなどして、身体を動かすことが大切です。

消費エネルギーを意識して無理なく身体活動を続けることが大切

効果的な減量に取り組むためには、食事内容に気をつけるだけでは十分ではありません。

身体活動のメッツ表を参考にし、消費エネルギーを意識しながら、日常生活の中で無理なく取り入れられることや、楽しく続けられることを見つけて、身体活動量を少しずつ増やしましょう。

  • 体を動かす時間や強度を増やすときは自分のペースを見ながら少しずつ無理のない範囲で増やすようにしましょう。
  • 運動中に体調不良や痛みなどがありましたら運動を中断しましょう。
  • 運動の前後にストレッチなどの準備運動、整理運動を行いましょう。
  • 水分補給をしっかり行いましょう。
  • 疾病をお持ちの方は主治医にご相談ください。