コラム

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2026.03.30

4.その他

血糖値を下げるための「食後10分」の賢い過ごし方

Contents目次

監修・執筆

監修: 医師 加藤 美貴(アムスランドマーククリニック勤務医)
執筆: 管理栄養士 小林 真紀子(アムスランドマーククリニック健康増進科)

はじめに

前回のコラムでは、血糖値を急上昇させない食べ方のコツについてお伝えしました。食べ方の工夫で血糖値の急上昇(血糖値スパイク)を抑えることは非常に重要ですが、実はもう一つ、心強い味方があります。それが運動です。とはいえ、毎日しっかり歩かなければと構える必要はありません。血糖コントロールにおいて最も大切なのは、激しい運動ではなく運動を行うタイミングだからです。
今回は、忙しい毎日の中でも無理なく続けられる、血糖値を下げるための食後の賢い過ごし方のコツをお伝えします。

1.運動のタイミング 〜「空腹時の1時間」より「食後の10分」〜

血糖値を上手にコントロールする上で、専門的な知見からも重要視されているのが運動を行うタイミングです。
減量のための運動は、蓄積された体脂肪を燃やすことが目的でした。一方で、血糖値対策としての運動は、「血液中にあふれ出した糖を、筋肉という“倉庫”へ速やかに回収すること」が目的です。
食後、血糖が上がるタイミングで筋肉を動かすと、細胞のスイッチが入り、インスリンの力を借りなくても糖がどんどん筋肉へ取り込まれていきます。毎食後にたった10分、家の中を片付けたり、足踏みをしたりするだけで、食後の高血糖を抑える効果が高いのです。これは、多忙な方にこそ知っていただきたい、効率的な運動術といえます。

2.運動が体にもたらすメリット

「糖尿病治療ガイド2024」では、運動療法の効果が以下の8点として整理されています。血糖値を下げるだけでなく、全身の健康を守るメリットが詰まっています。

【運動の効果】
①急性効果:血液中のブドウ糖や脂肪酸の利用が促進され、血糖値が下がる。
②慢性効果:インスリンが効きやすい体質になる。
③減量効果:エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善される。
④フレイル・骨粗鬆症の予防:加齢や運動不足による筋萎縮(サルコペニア)や骨粗鬆症の予防に有効。
⑤生活習慣病の改善:高血圧や脂質異常症の改善に有効。
⑥心肺機能の向上。
⑦運動能力の向上。
⑧QOL(生活の質)の向上:爽快感、活動気分の向上(メンタルヘルスへの好影響)。

3.効率よく糖を消費するポイントは「下半身」にあり


効率よく糖を消費するためには、体の中でも特に大きな筋肉が集まる「下半身」を動かすのが近道です。小さな筋肉(腕や腹筋)を動かすよりも、大きな筋肉(太ももやお尻)を動かすことで血液中の糖がスムーズに消費できます。
そこでおすすめなのが、どこでもできる「スクワット」です。

・回数は10回からでOK:最初から無理をする必要はありません。
・ゆっくり動く:呼吸を止めず、5秒かけて腰を下ろし、5秒かけて戻ります。
・安全第一:不安な方は、机や椅子に手をついて行いましょう。なお、関節等に痛みがある方は無理をせず、椅子に座ったままの足上げや、負担の少ない足踏みから始めてみてください。

食後のスクワットを習慣化し、テレビのCM中や、電子レンジの加熱を待つ間など、ちょっとした時間にも行うことで、体は少しずつ糖を燃やしやすい体質へと変わっていきます。

4.「座りっぱなしを中断する」新しい習慣

ガイドラインでもう一つ重視されているのが、座りっぱなしを中断する、という考え方です。
たとえ1日に30分のウォーキングをしていても、それ以外の時間をずっと座って過ごしていると、生活習慣病のリスクが高まることが分かってきました。座り続けることで下半身の筋肉が休止モードに入り、代謝が低下してしまうためです。
デスクワーク中心の方は、ぜひ「30分に1度、30秒だけ立ち上がる」ことを意識してみてください。立ち上がって背伸びをする、少し離れた場所へ飲み物を取りに行く。これだけで筋肉のスイッチがオンになり、血糖値を下げるインスリンの働きが良くなっていきます。

5.「バランス運動」で未来の自分への投資を

血糖値を管理するだけでなく、10年、20年後の自分を守るために「バランス運動」をご提案します。将来の転倒を防ぎ、一生自分の足で歩き続けるための土台を作ることは大切な備えです。
おすすめは「歯磨き中の片脚立ち」です。壁や洗面台に軽く手を添えて、左右1分ずつ。改めて時間を取らなくても、毎日続けられることです。

最後に


運動療法で最も大切なのは、「安全に、楽しく、細く長く続けること」です。
現在、通院中の方や足腰に不安のある方は、事前に主治医にご相談の上、ご自身の体調に合わせて無理のない範囲で取り組んでください。
今日から、食後の10分だけ、自分への投資として体を動かしてみませんか?「食後の後片付けをした」「30秒立ち上がった」という小さな積み重ねが、あなたの血管を守り、健やかな未来を形作っていきます。