コラム

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2023.11.30

1.食事

脂質異常症の改善について①

Contents目次

監修・執筆

監修:医師 金藤 昌子(アムスニューオータニクリニック勤務医)
執筆:保健師 山内 真由美(アムスニューオータニクリニック健康増進科)

脂質のバランスを整えるために必要なこと

前回のコラムでは、血中のコレステロールや中性脂肪には、直接食事から血液中に運搬されるものと、肝臓で合成されるものがあることをお伝えしました。

さらに、コレステロールは体内で必要な量が一定になるように調整されていますが、摂取過剰になると、調整が追い付かず脂質異常症を起こし、動脈硬化が進む要因となることもお伝えしました。

今回は、血液中のLDLコレステロール・中性脂肪・HDLコレステロールのバランスが崩れる大きな原因となる食事を中心とした改善方法をお届けします。

ポイント

1.体内で中性脂肪やコレステロールを「作りすぎない」

自分に必要な適正エネルギー量を知り、必要以上食べ過ぎない。
全体量だけでなく、血中脂質を増やしやすい食品の摂りすぎや、減らす働きのある食品の不足に注意するなど食事内容に気を付ける。

2.体内で中性脂肪やコレステロールを「貯めこまない」

しっかり食物繊維を摂ることで余分な脂質を体外へ排泄させる。
また、運動で中性脂肪を消費してHDLコレステロールを増やしLDLコレステロールを減らす。

3. LDLコレステロールを「酸化させない」

LDLコレステロールの酸化は、動脈硬化を進行させるので、抗酸化作用のある食品を摂取するほうが望ましい。
※具体的な食品については、次回お伝えします。

脂質異常症改善の食事計画を立てましょう

自分の目指す体重から、1日に必要なエネルギー量を知りましょう

ご自身のライフスタイルに見合った食事量になっているかどうかは、体重で知ることができます。

体重は、飲食での摂取エネルギー量と、身体活動や生命維持に使う消費エネルギー量のバランスで決まります。直近の健診結果で、身体計測の「BMI」の数値を見てください。

BMIとは

BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、日本肥満学会では18.5未満が「やせ」18.5~24.9が「普通体重」、25以上が「肥満」としています。BMI22の体重は、同じ身長のグループで最も死亡率や有病率が低くなるので「標準体重」と呼ばれています。

体重を適正に維持することは、脂質異常症だけでなく全ての生活習慣病を予防するうえで重要です。
肥満の判定域にあるなら、まずは3~6か月で体重を3~5%減少させることを目指しましょう。

また日本人の食事摂取基準では年齢別に、総死亡が最も低い目標とするBMIの範囲が定められているので、自分の目指す体重を考える上で参考にしてください。

年齢と目標とするBMI

・18~49歳:18.5~24.9
・50~64歳:20.0~24.9
・65歳以上:21.5~24.9

1日に必要なエネルギー量を計算する方法はいくつかありますが、ここでは日本動脈硬化学会から動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版に提示されている簡単な計算式を用いて計算してみましょう。


例にあるアムス太郎さんが標準体重を目指すのなら、1,600〜1,900Kcalの範囲が適正エネルギー量となります。

仮にアムス太郎さんがほどほどに晩酌は楽しみたいけれど、コレステロール高めで、太ってはいないけれど体重は気にしているので、低め設定の1,600Kcalを目安にするとしたら、何をどれぐらい食べれば良いのでしょうか。

適正なエネルギー量をバランスよく食べるには

脂質異常症の改善には、エネルギー源となる3大栄養素を適正な配分で摂ることが大切です。

炭水化物・たんぱく質・脂質の必要量が摂れていると、食欲が暴走したり、甘いものを多く食べたくなることが少なくなります。

3大栄養素を分解・吸収して体内でエネルギーや体の組織を作るにはビタミン・ミネラルが必要です。また、食物繊維や抗酸化作用の機能を持つファイトケミカルも、健康を保つ上で不可欠な栄養素です。

つまり何かを完全に抜いたり、偏って多く食べたりすることなく、さまざまな食品から栄養を摂ることが、本来備わった調整する力を発揮させ、代謝異常を改善することにつながります。

1,600Kcalの中で必要な栄養素を過不足なく摂るには、下の目安表に示しましたとおり、毎食「主食」「主菜」「副菜」を中心に、毎日牛乳や乳製品、果物も摂取するようにします。

調理の油は、1日20gまで

油は小さじ1杯が4gなので、1日で5杯(20g)までです。マヨネーズやドレッシングもあわせて、油を使った料理は1食に1品程度と意識していきましょう。

脂質は同じ分量でも炭水化物やたんぱく質の倍以上のエネルギー量があるので、油を摂り過ぎないように気を付けましょう。揚げ物など油を多く使うメニューは週1~2回までにし、「唐揚げとマヨネーズを使ったポテトサラダ」のように油を使ったメニューが重ならないようにしましょう。

適度な飲酒量は1合

適度な飲酒量は1合です。女性はこれよりも少ない量が適量となります。またアルコールなどの嗜好飲料や間食は総摂取エネルギー量の1割以下が目安となります。

1合換算あたりのエネルギー量は以下のとおりです。アルコールの摂取量を減らすことを目指しましょう。(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版でも、アルコールの過剰摂取を避け、できるだけ控えることが推奨されています。)

・日本酒1合(180Kcal)
・ビール500ml(200Kcal)
・焼酎25度100ml(140Kcal)
・ワイン230ml(赤ワイン160Kcal 白ワイン170Kcal)
・缶チューハイ7%350ml(180Kcal)
・ウイスキーダブル1杯(140Kcal)

「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より

また国内の6つの国立高度専門医療研究センターの「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言」では休肝日のない群に比べ、週1〜2日休肝日がある群では、1 日あたり概ね1 合未満の群で死亡全体のリスクが低下し、また、飲酒量に関わらずがんや脳血管疾患による死亡リスクが低下することが報告されており、休肝日を作ることが推奨されます。

次回は食材選びのポイントについてお伝えします。