コラム

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2023.12.22

1.食事

脂質異常症の改善について②

Contents目次

監修・執筆

監修:医師 金藤 昌子(アムスニューオータニクリニック勤務医)
執筆:保健師 山内 真由美(アムスニューオータニクリニック健康増進科)

脂質異常症を改善する食材選びのポイント

前回のコラムでは、脂質のバランスを整えるために必要なこと、脂質異常症改善の食事計画を立てることをお伝えしました。

今回は、具体的に食材選びのポイントについてお話します。

肉の脂、鶏卵を摂りすぎない

血中のコレステロールは食べ物に含まれるコレステロール由来が2〜3割で、大半は肝臓で合成されます。

日本動脈硬化学会では卵などコレステロールを多く含む食品について、LDLコレステロールが高い人は食品から摂るコレステロール摂取量を200mg未満にすることが推奨されています。卵は1個につき210mg含まれるので、控えるようにしましょう。

コレステロールより注意しなければいけないのが肉の脂です。日本人のあぶらの摂取源は調理油より肉からの摂取が最大となっています。肉の脂の摂りすぎを控えることが、脂質異常症改善のキーポイントです。

牛肉

牛肉は、どの品種のどこの部位を選ぶかがポイントになってきます。「和牛肉」(いわゆる黒毛和種のブランド牛)の脂量が一番多く、次いで「国産牛」(食肉用に飼育されたホルスタインなどの牛)、脂量が一番少ないのは「輸入牛」です。

また部位の脂量は少ない順に「もも < 肩 < 肩ロース < サーロイン < バラ」となります。例えば和牛バラ肉を輸入牛もも肉に変えると、脂肪を83%カットできます。

豚肉

豚肉も、部位の脂量の少ない順に「もも < 肩 < 肩ロース < ロース < ばら」となります。ひき肉、ソーセージ、ハムも摂りすぎないようにしましょう。

鶏肉

鶏肉は皮を取り除くことで皮下脂肪も一緒にとれますので、もも肉では65%脂肪をカットできます。

脂の量は少ない順に、鶏<豚<牛、となっており、脂の量の少ない鶏肉ばかりを選ぶ方もいますが、豚肉は糖質をエネルギーに変える時に必要なビタミンB1が豊富に含まれていますし、牛肉は鉄分が豊富に含まれています。

それぞれ特性が違うので、脂は控えながらもバランスよく選ぶことが、からだ全体の健康を保つ上で大切です。

加工食品を大量に摂らない

LDLコレステロールが高い人への注意事項

LDLコレステロールが高い人は、洋菓子や菓子パン、スナック菓子などのおやつは控えましょう。

これらの加工食品にはバターや生クリームなど飽和脂肪酸の多い動物性油脂が使われているだけでなく、植物油から工場で作られたトランス脂肪酸を含む加工油脂がよく使われています。

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らしてしまいます。

即席麺やカレーやシチューのルー、マヨネーズ、チーズなど脂の多い加工品の原材料表示で、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、パーム油が上位に記載されているものも、頻繁に使わないようにしましょう。冷凍食品やハンバーガー、ピザにもよく使用されています。

パーム油は植物性油ですが、飽和脂肪酸を含みます。加工食品の原材料として「植物性油脂」と表示されていることもあります。

中性脂肪の高い方への注意事項

中性脂肪の高い方は果糖のとりすぎにも注意が必要です。果糖は肝臓に取り込まれたあと一部が中性脂肪に変換されるので、果糖をたくさんとると中性脂肪が増えます。

糖の成分の一つである果糖は、糖の中でもっとも甘みが強く、冷やすとさらに甘みが増す性質があります。

少ない量で甘みを感じる低カロリー甘味料として清涼飲料水や乳飲料、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリームやガムシロップに多く使われています。

果物は食物繊維を多く含みますが、果糖も多く含まれるので食べ過ぎに注意して下さい。また、加工食品をよく利用する方は、果糖のできるだけ少ないものを選ぶようにしましょう。

選び方のポイントとしては原材料名の果糖の表示に注目してみてください。

・ぶどう糖果糖液糖(果糖含有量50%未満)
・果糖ぶどう糖液糖(果糖含有量50〜90%未満)
・高果糖液糖(果糖含有量90%以上)

魚の油は積極的に摂る

魚の油は、EPAやDHAなどのオメガ3系不飽和脂肪酸(ω3脂肪酸)が多く含まれます。ω3脂肪酸は、肝臓での中性脂肪の合成を抑えます。

中性脂肪が減ると超悪玉の小型化LDLコレステロールが作られにくくなり、善玉のHDLコレステロールも減りにくくなります。

魚の油は血液をサラサラにして血栓予防の効果があると聞いたことがある方は多いと思いますが、それだけではありません。

血管にできたプラークを安定化させて破裂しにくくする働きもあり、注目されています。毎日1切れは新鮮な魚を摂りましょう。

魚が苦手な方は同じ油の種類に属する「えごま油」「しそ油」「アマニ油」などを適量使うのも効果的です。

ためない~食物繊維で排泄、運動で消費~

食物繊維

食物繊維はコレステロールや胆汁酸を吸着し、小腸での吸収を抑え体外に排泄してくれます。

食事中の脂質の消化・吸収を助ける働きをする胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成されます。

この胆汁酸が体外へ排泄されると、胆汁酸を合成するためにさらにコレステロールを消費し、結果として体内のコレステロールが減ることになります。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では食物繊維の目標量は18~64歳で男性21g以上・女性18g以上ですが、動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2022年版)では25g以上と、より多い摂取が求められています。

前回のコラムで紹介した1日に摂取する食品目安表を参考に、野菜、海藻、きのこ、こんにゃく、果物、大豆・大豆製品・イモ類の目安量が摂取できれば、ほぼ目標量まで達成できます。

また3大栄養素のうち1日で半分を占める炭水化物の主食を未精製穀類(玄米、胚芽米や麦飯、全粒粉のパン、蕎麦)にするのがお勧めです。白ごはん1膳で食物繊維は0.5g摂れますが、胚芽米なら1.0g、麦入りなら2.3g、発芽玄米なら2.9gに増やす事ができます。

甘いものを食べる時も、食物繊維の多いものを選ぶのがコツです。例えば甘栗1個は、約10kcalなので10個食べても100kcalですが、食物繊維は4.3gも摂ることができます。

運動

運動は中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やすことで、LDLコレステロールを減らします。

週150分以上の速歩など有酸素運動を中心に週3日程度の筋トレなどを行い、座りっぱなしの生活を避けることを心がけましょう。

酸化を防ぐ

野菜を食べて酸化を防ぐ

LDLコレステロールが増え、酸化されることで動脈硬化が進むので、いかに酸化を防ぐかも重要です。

抗酸化物質は野菜に多く含まれます。緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA(βカロチン)、C、EはビタミンACE(エース)とも呼ばれている3大抗酸化ビタミンです。

ビタミンやミネラル、食物繊維に続き、第7の栄養素としてみなされているのがファイトケミカルです。植物が紫外線や虫などから身を守るために作りだす色素や香り、アク(苦味)などの成分で抗酸化作用があります。

にんにくやネギ類、ニラ、大根、わさびなどのイオウ化合物、カテキンやぶどうなどのポリフェノールなどが有名です。

禁煙も大切

喫煙の習慣があれば、禁煙も大切です。ニコチンやタールにより活性酸素が大量に発生し、LDLコレステロールを酸化させてしまいます。

知っていても 実行しなければ 知らないのと同じ

アムスグループでは、健診結果が気になる方にアフターフォローコースをご用意しております。
くわしくは下記のアドレスをご参照ください。

https://www.ams-dock.jp/point/follow/

LDLコレステロールの改善を目標にされた方々についても、保健指導担当医からの指示を得て、今回ご紹介した食事ポイントや運動を継続しながら健康管理の方法を身につけ、検査結果を改善されております。

3か月後、6か月後の皆様は、どのようになっていたいですか?脂質異常症改善に一番大切なことは知り得たことを完全にできなくても、少しでも実行に移すことです。行動することで健康状態が変わります。

どうぞ皆様も、一つでもできそうなことを試していきながら、ますます元気で充実した時間をお過ごしいただきますことを願っております。

※動脈硬化予防に役立つ食事について詳しく知りたい方は、日本動脈硬化学会の日本食パターンの食事(The Japan Diet)を参考にしてください。